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2018年1月22日月曜日

芥川龍之介「藪の中」の考察

■芥川龍之介作「藪の中」について



・青空文庫
http://www.aozora.gr.jp/cards/000879/card179.html

芥川龍之介「藪の中」は、映画「羅生門」の題材となった作品であり、芥川流の人間に対する皮肉に満ちた内容となっています。

…この物語の中で起きた事件は恐らく解決していないと思われ、確信に繋がる物的証拠も乏しく、何より証言する三人がすべて嘘を吐いているので、殺人を犯した人物も特定できずに物語は幕を閉じてしまいます。

この曖昧な終わり方が、後に興味深い題材として文学界で議論される事となります。その議題とは当然、「犯人は誰か?」を推理するものばかりです。

ここに、物語に対する興味深い論文が載っていました。

・高校生による「藪の中」殺人事件の一推理
http://yab.o.oo7.jp/yabuRH.html

一つの物語に対して、これだけ濃い内容の論文を書けるのはお見事だと思います。長文であるため、内容を簡単に纏めたものを以下に記載します。

※以下、物語のネタバレ

●物語の傾向について

1、証言者は自分を美化する傾向にある。
2、証言には矛盾があり、殆どが嘘を含んでいる。
3、物的証拠が乏しいため、容疑者の供述から犯人を推理しなければならない。

●殺害及び自殺の方法と凶器

被害者・武弘

盗人(多襄丸)との決闘により刺殺。凶器は太刀。
妻(真砂)の心中目的による刺殺。凶器は小刀。
夫(武弘)の自死。凶器は小刀。

●論文の結論

盗人(多襄丸)の証言から
1、決闘が起こった事実はなく、太刀による殺害証言はすべて嘘(状況を美化)
2、もし太刀による刺殺であったならば、傷口から凶器が特定される筈である。

妻(真砂)の証言から
1、心中を試みたことは事実だが、夫(武弘)が了承したという証言はすべて嘘(状況を美化)。
2、小刀で自分が夫を刺したと勘違いした可能性がある。

夫(武弘)の証言から
1、妻の不貞を知り、生き恥を晒すよりは自ら死を選んだという証言はすべて嘘(状況を美化、及び妻への当て付け)。
2、盗人(多襄丸)に媚びた妻(真砂)に逆上し襲い掛かる。しかし第三者(木こり)の妨害により、運悪く小刀が胸に突き刺さり死亡。かなりみっともない死に方。

夫(武弘)を殺害した犯人:木こり

木こりの証言から
1、物語の途中、夫(武弘)に対して「殺される前に手痛い働き」をしたと証言する。「争った」でも「抵抗した」でもなく「手痛い働きをした」である。
2、木こりは夫(武弘)を強姦魔だと勘違いしていた。
3、木こりは夫(武弘)が妻(真砂)に襲い掛かっている所を目撃、思わず飛び出して夫(武弘)を突き飛ばした。結果、運悪く小刀が胸に刺さり夫(武弘)は死亡。

……かなり省略して書きましたが、以上が論文の簡単な内容です。小説と照らし合わせながら読んでみるのも面白いと思います。
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