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2018年3月5日月曜日

横溝正史『八つ墓村』の感想

■横溝正史『八つ墓村』の感想





http://bookmeter.com/b/4041304016

この物語の着想は、本作執筆より十一年前に岡山で起きた実際の事件、「津山三十人殺し」からヒントを得た事で有名な話。

作中、探偵である金田一はほとんど活躍せず、もっぱら辰弥の語りを中心にして話は進行してゆきます。

言わば事件の回想録であり、金田一の推理力を期待する物語ではないため、他の作品同様、またしても「殺人の防御率」を下げてしまいます😅

しかし、本作品は実際の事件を題材としているためか、妙に生々しく迫力があります

後に何度も映像化され、鑑賞した人のほとんどは要蔵の奇行に戦慄するはずです。

恐らくこの作品がなければ、「津山三十人殺し」も歴史の中に埋もれた一事件に過ぎなかったのではないでしょうか?

特に渥美清さんが金田一を担当した、昭和52年の映画版は、そのオドロオドロしさと山崎努さんの熱演により、「津山三十人殺し」の印象を決定付けました。

いかに凄惨な事件であったかが、映像を通して理解することができるはずです。

…ちなみに、横溝自身が想像する金田一像は、渥美清さんが一番近いとか。

また、八つ墓村の「八」とは八岐大蛇の「八」であり、呪われた伝説である事も示唆しています。横溝作品特有の怪奇な雰囲気は、本作品にも十二分に満ち溢れています。

本作品は「呪われた伝説」、「要蔵の奇行」、「不気味な老婆の双子」、「甲冑に包まれた腐らない遺体」、「地下の迷宮」など、数々の仕掛けが用意。

数ある横溝作品の中でも大衆に知られた一つであり、何より実際の事件を扱った事から人気が高いです。金田一シリーズの入門書として適した一冊と言えると思います。

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