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2019年1月9日水曜日

漫画『ワンピース』の「おれは海賊王になる!」ではなぜダメのか



「おれは海賊王になる!」にならなかった理由


漫画『ワンピース』の有名なセリフ「海賊王に、おれはなる!」ですが、こちらは作者である尾田栄一郎さんの強いこだわりがあるようで、「おれは海賊王になる!」を選ぶことはなかったそうです。


以下はある読者の質問(なぜ「おれは海賊王になる!」ではないのか?)に尾田さんが答えた内容。


実は20年前、アニメ開始時に今や僕が”ONE PIECEの父”と呼ぶ男、東映プロデューサー清水さんに同じ質問をされました。僕がこのセリフに強いこだわりを持っていた事で、清水さんはONE PIECEの成功を確信したそうです!!まあ…”強い言葉”なんです、文法的に。「おれは海賊王になる!」という言葉を選ぶような僕では、ルフィは描けなかったと思います!つまり答えはノリです!

漫画は短いセリフが多いため、一言でインパクトを与えるのはとても重要ですが、ワンピースはこの点をかなり意識しているような気がします。

俳句の世界ではありませんが、語感や言葉の並び方にこだわるのは日本特有の文化ですね。特に漫画は「日本に生まれて良かった」と思うセリフが多々あります。

実際に「海賊王に、おれはなる!」を英語で訳せばこうなります。

"I'm going to become... ...the king of the pirates"
↑英語版ワンピースのルフィ旅立ちのシーン
"I'm gonna be king of the pirates"
↑それ以外のシーンで良く使われるセリフ

…もちろん正しい訳です。正しい訳で意味も合ってるけど何か違う。

"Kaizokuou ni oreha naru!!"

ローマ字に変えるとこんな感じになるため、やはり短い方が人の心に突き刺さるような気がしますね。


ルフィがチョッパーに発破をかけるシーン


ルフィがチョッパーに旅立ちを決意させるシーン(言葉)が私は大好きです。

「うるせェ!いこう!」

この言葉が出る前のページで、チョッパーはどんどん落ち込んで「仲間になんかなれない」という表情を浮かべます。

…イメージとしては下に下に向かう感じですね。

そして次のページでルフィが上に向かって一気に開放するようなイメージで言葉を発するため、漫画でしか味わえない見事な構図で物語を盛り上げています。


このシーン、「うるせェ!いこう!」以外の言葉が見つからないのがスゴい。

↓英語だとこうです。
"Just shut up and come with us!!!"

…う~ん長いぞ。さすがに違和感しかない感じ。

日本語に訳せば「黙れよ、一緒に行こうぜ!」ですが、これでも無難に訳した方で、直訳すれば「黙りなさい、そして私たちと一緒に来なさい!」ですから、「キャラが違う!」と言われそうです。

じゃあ日本語ならどうかというと、これもまた他に思いつかない。

「うるさいっ、行こうぜ!」
「やかましいっ、来るんだ!」
「いいぜ、来いよ!」

…最後のセリフはどうでも良いとして、どれも「うるせェ!いこう!」ほどの力強さはありません。

それに、チョッパーは怒鳴っている訳でもないのに、「うるせェ」で返すルフィもルフィですが、この言葉の中には「そんことは関係ない」という意味も含まれているため、読む人にとって色々な受け取り方になるのも面白いですね。

ワンピースは他にも多くの名言を残していますが、それを語るのは次の機会ということで。
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