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2020年3月26日木曜日

「みんなで作る」がヒットを生む『鬼滅の刃』と『進撃の巨人』に見る現代の作品づくり



爆発的なヒットを飛ばす『鬼滅の刃』


先日、『鬼滅の刃』のアニメ26話をすべて観終わり、次の日に漫画を2冊ほど購入しました。




アニメでは最初の1~2話の辺りで「日本のゾンビものかぁ…」という印象だったので、そのまま半年ほど放置していたのですが、しばらくしてまた最初から26話まで一気見したという感じになりました。

面白くなったのは鱗滝さんとの修行を終えた辺りからですね。

敵となる鬼にもそれぞれ事情があることを知り、ただ憎い存在として扱っていないことに新鮮さを感じました

…さて、今回は物語の感想を述べるのではなく、『鬼滅の刃』に見る現代の作品づくりの傾向というものを少し考察したいと思います。

ネットでこんな記事を読みました。



そうした人気の背景には、TVアニメの放送がある。2019年4〜9月にかけて放送された『鬼滅の刃』のアニメは、そのクオリティの高さで大きな話題となり、東京アニメアワードフェスティバル2020のテレビ部門作品賞やYahoo!検索大賞 2019アニメ部門、第12回日本ブルーレイ大賞アニメ賞など様々な賞を受賞。

『鬼滅の刃』が売れたと思われる要因として、まず最初に「アニメのクオリティの高さ」が挙げられます。

実際、アニメの終了後に漫画の売上部数が20倍になったので、アニメから作品の存在を知ったという人も少なくないはず。

…ただし漫画の絵のクオリティですが、正直な感想を述べると平均的と思います。

過去の作品と比較するのは酷かもしれませんが、原作者の吾峠呼世晴氏が作品を披露する戦場は、数多のレジェンドを生み出した『週刊少年ジャンプ』です。

どの漫画家もジャンプで連載することは夢であり、作品が当たれば一流のクリエイターとして認められます。

その一方で、他の漫画誌よりも打ち切りが激しく、面白くなければコミックとして出版するのも難しいことで知られています。

デザイナーとしての力量もあった鳥山明氏でさえ何度も書き直しをさせられたのですから、ジャンプ黄金期には『ドラゴンボール』はじめ、50を超える名作たちがジャンプから生まれました。


一人の天才は必要のない時代へ


勘違いしないで欲しいのは、漫画家として吾峠氏の力量が劣っていると言いたい訳ではありません。

漫画は映画などと同様に「総合芸術」だからです。

絵の上手さはもちろん、ページ全体の構成やセリフ・擬音の使い方、読者を引き付ける面白い物語など、創作者が総合的に試される娯楽の一つです。

いくら絵が上手くても、物語の内容が破綻していれば読者は離れてしまいます。

近年において、絵のクオリティが平均的と言われる一方で、物語の斬新さがウケてヒットを飛ばした作品があります。



『進撃の巨人』です。

こちらも『鬼滅の刃』と似たような経緯で爆発的な人気を集めたと考えられます。

…特にアニメのクオリティが凄まじい。



原作者である諫山創氏も「アニメが本編かも」と語るほど、アニメーターの気合いの入れ方が違う作品になっています。

良い意味でお互いの化学反応が起き、足りない部分を補完し合うことで『進撃の巨人』という一つの作品が飛躍的に成長した好例だと思います。

そこへSNSでのファンによる応援やグッズの販売、ゲームでのコラボレーションなどの相乗効果が加わり、世界中で観られる作品として歴史に名を残しました。

有名な話ですが、諌山氏は一度ジャンプの編集局(集英社)に作品を持ち込んで審査落ちしています。

これは長いジャンプの歴史の中でも致命的な汚点となりましたが、『ワンピース』など数々の名作を扱うジャンプの編集局でさえ、現代のヒットの法則が読めない状況にあるような気がします。

そして、次の波に乗り上げているのがまさに『鬼滅の刃』です。



ご存知の通り、ジャンプは「少年誌」ですが、『鬼滅の刃』は女性の人気が圧倒的に高いことで有名。

もし漫画の構成が『ドラゴンボール』のようにアクション満載の内容であれば、ここまで女性の人気を獲得したか疑問ではあります。

その足りない部分であるアクション性を、アニメは動きのある日本絵画風の描写(全集中の呼吸など)で繊細に表現することにより、物語全体のクオリティを高めています。

ここでも漫画とアニメとの良き関係性が築けている好例だと考えます。

漫画というジャンルだけが独り歩きせず、「一人の天才」を必要としない「みんなで作る」作品づくりが、今後の主流となるかもしれないですね。
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