Netflixで配信中の「デスゲーム」シリーズ
映画やゲームですっかりメジャーになった一人生き残り型の「デスゲーム」というジャンル。
原点となった作品で思い浮かぶものに映画『バトル・ロワイアル』がありますが、2000年の公開なので、日本では20年以上も前から知られているジャンルとなります。
映画で有名なのは『ハンガー・ゲーム』、ゲームでは『PUBG』や『フォートナイト』もデスゲームに入りますので、どのコンテンツも空前のヒットを飛ばしたことから、いかに人気の高いジャンルであるか理解できると思います。
そこで現れたのがNetflixで配信中の『イカゲーム』です。
2021年9月17日に全世界で公開され、今では視聴者数が1億世帯を超えるなど、熱烈な話題を集める作品へと成長しました。
『イカゲーム』は韓国の作品ですが、同様に日本でも少し前に『今際の国のアリス』というデスゲームの作品を世に送り出しています。
『今際の国のアリス』も公開当時は人気がありましたが、現状は『イカゲーム』の話題性に便乗する形で視聴者数が伸びているという感じです。
否が応でも比較される状況となったため、どちらが上だ下だのパクリだなんだのという論争がネットで起こっていますが、個人的な感想としては「どちらも楽しめた」というのが正直なところですね。
今回は二つの作品の違いを検証し、『イカゲーム』が何故これだけの人気を集めたのか考察してみたいと思います。
※ネタバレになるため、ここから先は二つの作品の視聴後にお読みください
主人公の年齢の違い
まずヒットの要因になったと思われる、主人公の年齢について比較してみます。
イカゲーム:ソン・ギフン(47歳)
今際の国のアリス:有栖良平(24歳)
「若い人は生存本能が強いため、殺し合う確率が高い」と思われがちで、『バトル・ロワイアル』や『ハンガー・ゲーム』もそのセオリーに倣っていますが、『イカゲーム』は従来と違う設定なのが一目で分かります。
また『イカゲーム』と雰囲気が似ている漫画『賭博黙示録カイジ』でさえ主人公の年齢は21歳です。
その点では大きな賭けに出たと言える作品となりましたが、莫大な借金を抱え、人間不信の極みにあるような人間の方が殺し合う可能性が高そうなので、韓国作品はこうした生々しさを出すのが本当に上手いなと感じました。
また、Netflixにおける視聴者の平均年齢が高くなっている傾向があり、この点も慎重にマーケティングを意識していると考えられます。
もし日本で『イカゲーム』を制作した場合、どんな変化が起こるのでしょうか?
キャスティングに関しては、日本のイメージだと大泉洋さんを推す声が上がっていますが、自分のイメージとしては西島秀俊さんかなぁと。
ソン・ギフン役に抜擢されたイ・ジョンジェさんは、Wikipedeiaに「長身なスタイルの良さを活かしたクールな役柄のイメージで広く認知」とあるため、意外性を狙った配役がここでも必要になると思われるからです。
……それから、チャン・ドクス役には堀江貴文さんでお願いします。
ゲームの複雑性
『イカゲーム』と『今際の国のアリス』に登場するゲームの違いです。
イカゲーム:だるまさんが転んだ、型抜き、綱引き
今際の国のアリス:雑居ビルでの二択問題、殺し合いの鬼ごっこ、バスを拠点とした長距離走
最初に登場する3つのゲームを挙げましたが、『イカゲーム』はシンプルなものが多く、『今際の国のアリス』は頭を使ってクリアするものが多い印象ですね。
先にも述べましたが、『イカゲーム』は視聴者に共感させることを意識しているように思えます。
タイトルにもあるイカゲームは知らないとしても、だるまさんが転んだや綱引きは誰もが知るゲームです。
この点においては「共感させる」ことに成功していると言えますが、あえて不満を述べるなら肝心のイカゲームはあまり印象に残らず、単なる殺し合いで幕を閉じてしまったのが残念でした。
おそらくシーズン2でイカゲームの扱いも変わると思われますので、シーズン1は紹介として留めたと考えるのが自然な流れかもしれません。
(……もしくは、だるまさんが転んだで予算を使い過ぎたのかな?)
ゲームの舞台
ゲームを開催する舞台を比較してみたいと思います。
イカゲーム:絶海の孤島
今際の国のアリス:渋谷
二つの舞台は大きく違いますが、『イカゲーム』は過去のミステリー小説のセオリーに倣った印象があり、『今際の国のアリス』は街全体とスケールの大きな舞台設定といった印象ですね。
Netflixは世界の人たちを対象にした動画配信サービスなので、『イカゲーム』の選択は正しかったのかもしれません。
一方で、『今際の国のアリス』は国内の人しか分からないことが多々あります。
渋谷は人通りの多い街なので、無人と化した光景は圧巻の一言ですが、海外の人にはそれが伝わり難かったように思えます。
またゾンビ映画など、アポカリプスものが数多く作られた背景もあり、視聴者はもう見慣れてしまったのかもしれません……あくまで予想の範疇ですけどね。
二つの作品の総合的な感想
正直なところ、『イカゲーム』の制作スタッフはこれほどヒットするとは思っていなかったはずです。
似たようなコンテンツとして『今際の国のアリス』がすでに配信されてましたし、「またアジアはデスゲームものか」という印象を与えるリスクもあります。
……しかし結果は大成功。
ますます映画・ドラマは韓国、アニメーションは日本という二極化が進みますが、売れるものを重視するNetflixにとっては、投資対象が非常に分かりやすくなったと言えるかもしれません。
ここまで書くと「おまえは『今際の国のアリス』が面白くないのか!」と思われるかもしれませんが、比較したのは同じデスゲームものでも面白さがまったく違うと言いたいからです。
……まずは観てよ、どっちも面白いしハマるから。
この手のドラマは精神的にも疲れますが、「アジアの作品づくりが非常に頑張っている」ことを確認できますので、一見の価値はあると思いますよ。