歴史的建造物における掃除の重要性
土の中に埋まらなかった歴史的建造物
こんなつぶやきを見つけました。
昔の古墳とか土の中から発掘されるのに、どうして法隆寺は埋まってないんですか、っていうのはいい問いだなあ。しかもその真相はお坊さんが毎日掃除するから、っていうのがすごい。
— 寺田 実 (@miterada) October 4, 2020
つぶやきの内容は、古墳のように法隆寺はどうして地面に埋もれないの?という質問に対し、お坊さんが毎日掃除するから今の状態を保っていると回答したもの。
皆さんが住んでいる建物というのは、放置しておくと予想以上に老朽化が進むことをご存知でしょうか?
こちらは鬼怒川周辺の廃墟化した旅館やホテルです。
これらの旅館やホテルは1999年~2010年頃に廃業となり、およそ20年の月日が経ってこのような変わり果てた姿となりました。
土の中に埋まるまではいかないとしても、人の手が入らない建物というのは凄まじい勢いで老朽化が進むのです。
また、手入れの行き届かない建物の周辺は犯罪が起こりやすくなるため、人が寄り付かなくなり商売どころではありません。
ニューヨークでは壁の落書きをこまめに消したことで、犯罪が激減したという実績もあります。(「割れ窓理論」で知られています)
つまり防犯の上でも掃除やメンテナンスというのはとても重要な作業なのです。
歴史的建造物は文化遺産の宝庫なので、盗賊のターゲットにならないためにも「ここは人の手入れ(監視)が行き届いている」とアピールできます。
皆さんは京都にあった『羅城門』をご存知でしょうか?
現在は、京都市内にある児童公園に石碑が立っているのみで影も形もありませんが、平安時代には平安京を外部の妖怪から守る門として庶民から親しまれていました。
この時代は『陰陽師』という専門の職業があったくらいなので、内と外との境界になる羅城門は、呪術の観点からも重要な意味を持っていたのです。
文献によると羅城門は弘仁7(816)年8月16日に大風により倒壊。
その後再建されたにも関わらず、天元3(980)年7月9日の暴風雨で再び倒壊し、以後は再建することなく放置されることになりました。
放置された建物は、鬼怒川の旅館やホテルと同じく急速に老朽化が進みます。
以後の羅城門に何が起きたかというと、荒れ放題なのはもちろん、人が寄り付かないため盗人の棲み処になったり、死体が捨てられて山積みになるなど悲惨な状態になりました。
芥川龍之介の『羅生門』も、この時代の背景をテーマとして小説を書いています。
もし人の手が入れば、今頃は平安神宮にある応天門のように重要遺産として残されていたはずです。
今ある歴史的な建造物を拝めるのは、多くの人が手入れを行ってきた賜物なので、感謝しながら鑑賞したいものですね。