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2018年2月26日月曜日

綾辻行人『十角館の殺人』の感想

■綾辻行人『十角館の殺人』の感想





http://bookmeter.com/b/4062758571

ミステリー好きのミステリー好きによるミステリー好きのためのミステリーです。読めば分かると思います(笑)

書評にて鮎川哲也さんが「こういった本格を書く新人を批評家が叩いてはいけない」とコメントしているのが何だかとても微笑ましかったです。

「絶海の孤島」「からくり仕掛けの館」「見立て殺人」と、批評家の絨毯爆撃を受けそうな要素満載のお話なので、こう擁護する理由も頷けます。

作者である綾辻行人さんは「この作品が自分のベストではない」とコメント。

確かにこの作品は綾辻氏という作家を知る名刺のような役割を果たしているので、「綾辻行人といえば十角館」と断言するのはかなりまずいような気がします。それにまだデビュー作ですしね。

物語から漂ってくるのは「この作家さん、本当にミステリー作品が好きなんだな」という雰囲気であって、完成度云々を語るよりも、その雰囲気を楽しめれば作品として十分成功していると思います。

一読すれば次回作が楽しみな作家さんとして記憶されるので、ある意味これも才能の一つなのかもしれません。

作品自体は「新本格ブーム」を巻き起こす記念碑的な役割を果たしたので、ここであれこれ私が語るのは野暮というものですよね。

謎解きの要素は極めて薄い作品ですが、「あの」一行の衝撃を味わえば十分満足できると思います。

海外ミステリー作品に詳しいと「ちくしょう、やりやがった」感が跳ね上がるので、事前の予備知識は少し必要になるかもしれません(有名な古典作家の名前は特に)。

エドガー・アラン・ポー、エラリー・クィーン、ヴァン・ダイン、ガストン・ルルー、アガサ・クリスティなど、色々と読んでおくと良いと思います。
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